(背景表示:夜の校舎内)
机の脇に下げた袋にお目当ての物があることを確認し、
非常灯とスマホの明かりだけが頼りの薄暗い廊下は
昼間とはまるで違った顔を見せる。
怖がりな人物ならひどく恐ろしく感じるのだろうが、
里央が気になるのは別のことだった。
アイツ言い方ねちねちしてるやん。
地面にほかされたガムかっちゅーねん。」
外村というのはベテランの生物教師だ。
嫌味な物言いから生徒に嫌われている。
地面にべちょっと張り付きながら
キーキーわめく外村を想像して、
里央の口元がふっと緩んだ。
見つかったりせんやろ。」
(暗転)
(背景表示:夜の教室)
教室に入るとミハルはすぐに自分の机に飛び付いた。
(背景表示:夜の教室)
教室に入るとミハルはすぐに自分の机に飛び付いた。
机の脇に下げた袋にお目当ての物があることを確認し、
ニカッと満足げな笑みを浮かべる。
ほんならちゃっちゃと帰ろか。」
子供じゃないんだし、
誰もそんなの盗ったりしないよ。」
うさぎちゃん人形は一点モンやで!」
【ミハル】「欲しいてたまらん女子が
おったっておかしないわ!」
ミハルは袋からうさぎのぬいぐるみを出して
里央に見せつけた。
ミハルはガサツそうに思えて手芸部員だ。
手先が器用なのでそれなりにきれいな物を作る。
ただ…。
(画像表示:微妙なうさぎの人形)
(画像表示:微妙なうさぎの人形)
素晴らしい出来やろがい!!」
デザインがいまひとつ可愛くない。
中心に寄った顔のパーツ。真っ黒なデカ目。
くすんだピンク、にょろんとしたフォルム。
絶妙に微妙なうさぎを、ミハルはどや顔で掲げた。
ちょっと苦しいかな、と里央は思ったが、
ミハルは満足そうにフフンと鼻をならした。
上手と言われた事が嬉しかったらしい。
ミハルは上機嫌で廊下に出る。
里央もそれに続いた。
(暗転)
(背景表示:夜の廊下)
(暗転)
(背景表示:夜の廊下)
小さく聞こえるピアノの音色に、
2人は足を止めて顔を見合わせた。
これってあれかな、学校の七不思議的な…。」
そんなまさか…、なぁ?」
そんなやりとりの間も
綺麗なピアノの音は途切れず聞こえている。
ピアノを弾く生徒がおるとは
けしからんと思いませんか?」
このまま帰ったら気になって寝られへん!
ええやろ?里央!」
人間かユーレイか確かめたいやん!
こんなチャンスめったにないで!?」
ミハルの目はランランと輝いている。
こうなったミハルを説得するのは難しい事を
里央は経験上よく分かっていた。