(背景表示:夜の校舎内)

男01ふつう
【里央】「よいしょっ…。ここってどのへん?」

女02ふつう
【ミハル】「保健室と応接室の間らへんやな。」

男01ふつう
【里央】「ああ。」

非常灯とスマホの明かりだけが頼りの薄暗い廊下は
昼間とはまるで違った顔を見せる。

怖がりな人物ならひどく恐ろしく感じるのだろうが、
里央が気になるのは別のことだった。

男01ふつう
【里央】「今日の宿直ってどの先生かな。」

女02ふつう
【ミハル】「さあ、さすがのミハルさんも そこまでは分からんな。」

雑談しながら二人は目的の教室へ向かう。

男01しゅん
【里央】「教頭に遭遇するのだけは避けたいなぁ…。」

女02あきれ
【ミハル】「あー、教頭もやけど外村のがイヤやなあ。
 アイツ言い方ねちねちしてるやん。
 地面にほかされたガムかっちゅーねん。」

外村というのはベテランの生物教師だ。
嫌味な物言いから生徒に嫌われている。

地面にべちょっと張り付きながら
キーキーわめく外村を想像して、
里央の口元がふっと緩んだ。

女02笑
【ミハル】「まあ。パッと教室行ってパッと取るだけや。
 見つかったりせんやろ。」

男01笑
【里央】「だと良いけどね。」

(暗転)

(背景表示:夜の教室)

教室に入るとミハルはすぐに自分の机に飛び付いた。

机の脇に下げた袋にお目当ての物があることを確認し、
ニカッと満足げな笑みを浮かべる。

女02笑
【ミハル】「あったで、里央!
 ほんならちゃっちゃと帰ろか。」

男01ふつう
【里央】「そりゃあるでしょ。
 子供じゃないんだし、
 誰もそんなの盗ったりしないよ。」

女02おこ
【ミハル】「なんや、ミハルさん特製の
 うさぎちゃん人形は一点モンやで!」

【ミハル】「欲しいてたまらん女子が
 おったっておかしないわ!」

ミハルは袋からうさぎのぬいぐるみを出して
里央に見せつけた。

ミハルはガサツそうに思えて手芸部員だ。
手先が器用なのでそれなりにきれいな物を作る。
ただ…。

(画像表示:微妙なうさぎの人形)

女02笑
【ミハル】「どうや、このかぁいらしーうさちゃん!
 素晴らしい出来やろがい!!」

デザインがいまひとつ可愛くない。

中心に寄った顔のパーツ。真っ黒なデカ目。
くすんだピンク、にょろんとしたフォルム。
絶妙に微妙なうさぎを、ミハルはどや顔で掲げた。

男01あきれ
【里央】「うん、ええと、その。上手だよね…。」

ちょっと苦しいかな、と里央は思ったが、
ミハルは満足そうにフフンと鼻をならした。
上手と言われた事が嬉しかったらしい。

女02笑
【ミハル】「さてさて、ほんなら見つからん間に帰りますか。」

ミハルは上機嫌で廊下に出る。
里央もそれに続いた。

(暗転)

(背景表示:夜の廊下)

男01あきれ
【里央】「…んっ?」

(BGM:ピアノの音色:変更)

小さく聞こえるピアノの音色に、
2人は足を止めて顔を見合わせた。

男01あきれ
【里央】「…………。」

女02おこ
【ミハル】「…………。」
【ミハル】「里央の着信音か?」

男01あきれ
【里央】「着信音遠すぎるでしょ。
 これってあれかな、学校の七不思議的な…。」

女02あきれ
【ミハル】「イヤイヤイヤ、まさかそんなそんな…。
 そんなまさか…、なぁ?」

男01あきれ
【里央】「…………。」

女02あきれ
【ミハル】「…………。」

そんなやりとりの間も
綺麗なピアノの音は途切れず聞こえている。

女02笑
【ミハル】「…なあ、里央さん。こんな時間に
 ピアノを弾く生徒がおるとは
 けしからんと思いませんか?」

男01あきれ
【里央】「えっ…。もしかして…、」

女02笑
【ミハル】「ちょっと見に行こーやあ!
 このまま帰ったら気になって寝られへん!
 ええやろ?里央!」

男01しゅん
【里央】「えぇぇー…。」

女02笑
【ミハル】「ちょっと覗くだけやって!
 人間かユーレイか確かめたいやん!
 こんなチャンスめったにないで!?」

ミハルの目はランランと輝いている。
こうなったミハルを説得するのは難しい事を
里央は経験上よく分かっていた。

里央は…、(選択肢表示)

1、ミハルと音楽室へ
2、絶対に行きたくないでござる